Skip to Main Content

九コレで学ぶ「くずし字」の世界: 手習いその三 「枕草子」

古い時代の資料に書かれた、読めそうで読めない「くずし字」。九大コレクション(九コレ)で九大所蔵の資料を眺めながら、「くずし字」の世界に触れてみましょう。

古活字版枕草子 より

※画像をクリックすると拡大します

【解説】

手習いの最終回は、十三行古活字版『枕草子』からの抜粋です。

『枕草子』といえば、言わずと知れた清少納言による随筆。小学校・中学校で暗誦した思い出のある人も多いのではないでしょうか。

平安時代に書かれたこの随筆は、古くから写本として書き継がれ、現代に伝わっています。ただ、書き継がれる際に、文章や内容に異同が生じることが多々あり、複数の系統の本文が生まれました。そうした経緯や、本学所蔵の『枕草子』については、本学で教鞭をとっておられた今西祐一郎先生による詳細な解説があります。

[参考]
Cute.Guides:「貴重資料(九大コレクション): 枕草子」(今西祐一郎)

これによりますと、『枕草子』の本文は「三巻本」「能因本」「前田本」「堺本」の四系統があり、現在教科書などで広く通用しているのは「三巻本」系統なのですが、今回画像で表示した十三行古活字版『枕草子』は「能因本」系統にあたるとのことです。

画像では、非常に有名なとある一節を抜粋しました。すぐに「ああ、あれか」と分かる人も多いでしょう。ですが、よく読むと、ところどころ、記憶と違う部分が見つかるかもしれません。そうした違いも意識しながら、読解に挑戦してみましょう。

なお、九大コレクションでは、『枕草子』関連の下記の貴重資料の画像を見ることができます。

  • 十三行古活字版『枕草子』
  • 慶安二年版『枕草子』
  • 『清少納言枕双紙抄』:江戸時代初期、加藤盤齋(1625-1674)による注釈書

資料の画像はこちらをクリック。

翻字 答え

ここがポイント

  • はるは:二つ目の「は」は「盤」が崩れた形です。崩し方がきついため、字母を想像するのは難しいと思います。比較的頻繁に登場するので、前後の流れをもとに読んでいきましょう。
  • むらさきたちたる:「たる」の「た」は「堂」を字母とする仮名です。「堂」の読みは古典的仮名遣いで「たう」と書く通り、「た」の音と通じています。「希」を字母とする「け」と同じく、字母の読みが現代人にはあまり馴染みがないため、注意が必要です。
  • むしのねなど。ふゆはゆきの…:解説でも書いた通り、本資料は「能因本」系統の本文です。教科書などで知られる「三巻本」系統にある「虫の音など言ふべきにもあらず。冬はつとめて。…」という文章が欠落しているのが分かります。本画像だけでも、ここの他にも大小さまざまな違いがあるのが実感できると思います。
  • ひるになりて:「に」の字母は「耳」。頻出です。
  • 次は…

    手習い其の一:『機巧図彙』より

    手習い其の二:『扶桑名勝図』より

    手習い其の三:古活字十三行版『枕草子』より

    おまけ