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九コレで学ぶ「くずし字」の世界: 手習いその二 「扶桑名勝図」

古い時代の資料に書かれた、読めそうで読めない「くずし字」。九大コレクション(九コレ)で九大所蔵の資料を眺めながら、「くずし字」の世界に触れてみましょう。

扶桑名勝図 安藝国巖嶋記事 より

※画像をクリックすると拡大します

【解説】

 手習いの二回目は、九大本『扶桑名勝図』から、「安藝国巖嶋記事」の抜粋です。

『扶桑名勝図』は、川平敏文・勝又基「『扶桑名勝図』考 : 九大本を中心に」(平成10年「文獻探究」第36号、16-30頁)で書誌情報や成立過程が詳しく研究されています。一部を引用しますと、

『扶桑名勝図』は、いわゆる「日本三景」(厳島、天橋立、松島)に吉野山を加えた四名所の詳細な木版手彩色画に、福岡藩儒貝原益軒、仙台藩儒佐久間洞巌らの解説を付したもので、京都の書肆柳枝軒(小川多左衛門)によって、正徳三年から享保十三年に亙り逐次刊行されたものである。

とのことです。この論文によれば、「安藝国嚴嶋記事」は、福岡藩儒の貝原益軒の奥付がある『東路記』の「安芸国厳嶋記事」を加筆修正して成り立っているとのことです。

画像は、安芸の宮島こと厳島について、基本的な事柄が書かれた箇所を抜粋しました。宮島はどこにあり、どのような様子なのでしょうか。ちょっと長いですが、旅人になったつもりで読んでみましょう。

なお、九大コレクションでは、挿絵も含めて全巻を見ることができます。
資料の画像はこちらをクリック。

翻字 答え

ここがポイント

  • 海の中にあり廣嶋を…:前近代の資料では、句読点が全く書かれないことも普通です。文法に注意しつつ文章の切れ目も意識しましょう。
  • 十里許:「じゅうりばかり」と読みます。場所を説明する文章では頻繁に登場する表現です。
  • 小戸の迫戸:「の」の字母は「能」です。これも頻出。
  • :「余」の旧字体です。本画像ではあまりくずれていないので読みやすいですが、くずし字の資料では、旧字体が崩されている場合も多いので注意が必要です。
  • しげりて:「げ」の字母は「希」。比較的珍しい字です。
  • 相去事:「事」という漢字は頻繁に書かれるため特徴的なくずし字が存在します。
  • 宮居:この資料では「宮」の字体が二種類あり、画像のように崩れた形と、さほど崩れていない形とがあります。仮名と同様に、漢字でも複数の字体が同じ資料に同時に存在する場合もあります。前後の文脈や、他に似た文字を使っている箇所を参照しながら読み進めていきましょう。
  • 釣て:「て」の字母は「帝」。これも比較的珍しい字です。